研究概要 |
部分溶融物質の変形流動に伴う内部構造変化とマクロな力学物性への影響を調べる実験を行なった.地殻深部や上部マントルに存在する部分溶融岩石のアナログ物質として、二成分共融系の有機物を用いている。まず予備実験として、静水圧下において液相分率を5-20%の範囲で変えた試料を作成し、内部構造を観察した.その結果、液相分率が小さい部分溶融試料は等粒状の組織を作るのに対して、液相分率が大きい試料では、固体粒子がより自形に近い形状をとることが分かった.結晶の向きによる界面張力の異方性が、静水圧下での平衡組織に大きく影響することが分かった.次に、液相分率が8.9%、16.7%、22%の部分溶融試料(70mm角)について変形実験を行ない、変形流動下における内部構造の時間発展を超音波二成分の横波によってその場観察した.まず、試料に与えたせん断歪みが比較的小さい範囲では、全ての試料に対して、差応力下でのみ存在する異方的構造を横波の偏向異方性によりとらえた。これは最小圧縮応力方向に法線を持つメルトのアラインメントにより説明されるものであった(この構造をモードIとよぶ)。さらに、液相分率の大きい試料(16.7%,22%)については、(最大圧縮軸と最小圧縮軸の向きを変えながら)繰り返し変形実験を行ない、試料に大きな歪みを発生させた.その結果、歪みの小さい範囲ではモードIの構造が支配的であるが、歪みの大きい領域では、さらに、最大せん断応力方向にもメルトのアラインメントが発達することが分かった.以上の成果に加えて、固液界面張力を扱うための理論的枠組みを作り、論文公表した。
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