研究概要 |
本研究の目的は山体崩壊シミュレーションのための数値解析手法の開発であり,1)山体やマグマの確率モデルの作成手法の考案,2)確率モデル内での亀裂進展による動的破壊の解析理論の構築,3)解析理論に基づく数値解析手法のコード化,を具体的課題としている.第一の課題では,急速な進展を遂げている火山体構造探査の現況を調べ,どの程度の精緻なモデルが作成可能かを見極めた上で,確率モデルの作成手法を考案する.第二の課題では,特に動的破壊力学の観点から火山噴火が引き起こす山体崩壊のメカニズムを検討した上で,新しい連続体解析理論に基づく動的破壊現象の解析理論を構築する.第三の課題は,確率モデルと解析理論に基づき,山体崩壊の3次元数値解析手法のプログラムをコーディングする.研究目的が数値解析手法の開発であるため,主要な課題は第三の数値解析手法のコード化である. 本年度の成果は,山体やマグマの確率モデルの作成手法の考案と動的破壊の解析理論の構築である.文献調査によって,山体とマグマの材料特性の値そのもののばらつきや時空間的変動を調べた.極めて非一様性が高く,数倍のオーダで値がばらつく.したがって,数値解析に供される確率モデルとして,相応に粗いものしか意味を持たないことが判明した. 第二の成果は数値解析手法のプロトタイプのコード化である.なお,確率モデルのばらつきが大きいため,従来の解析理論の適用範囲にあるため,理論の拡張と合わせてコード化を行った.二次元状態の山体を解析するプロトタイプのコード化は完成した.コードの妥当性を検証するため,単純化された山体崩壊のモデルに対し、モンテカルロシミュレーションと開発された解析手法を適用したところ,解析結果の一致は十分ではない.ばらつきの大きい確率モデルに対する解析理論の精緻化を検討中である.
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