室内実験によるマグマ溜まりのダイナミクスと地震波観測の対応

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15038209
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 隅田 育郎 金沢大学, 理学部, 助手 (90334747)
• 研究分担者: 並木 敦子 日本学術振興会, 特別研究員 ; 平松 良浩 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (80283092)
• キーワード: 火山 / マグマだまり / 部分溶融 / 地震 / 減衰 / 火直 / 破砕 / 気泡

研究概要

マグマだまりのダイナミクスを解明するために、3つの異なるアプローチを併用した。
隅田は、固化が進行している場の超音波モニタリング実験を行った。これは、マグマだまりの固化過程を地震波を用いてモニタリングするアナログ実験である。部分溶融体のアナログとして、塩化アンモニウム水溶液を用い、下面を冷却することにより固化させた。この系は、これまでは減衰が大き過ぎて測ることが困難とされてきたが、今回はアンプを使用すること、超音波素子を100Vで励起することにより測定に成功した。部分溶融体の中を伝播する縦波を1MHzおよび10MHzで測定した。その結果、1MHzでは減衰が非常に大きいこと(Q値が30)、波長と樹枝状結晶が同程度であり、伝播距離が長くなると、正分散を示す顕著な散乱が起きることが判明した。また横波についても測定し、部分溶融状態では横波が伝播しないこと、共融点以下になって横波のシグナルが判別でき、ポアソン比が0.37と高いこと、そしてSH>SVの異方性があることが分かった。
平松は、インド洋のホットスポット火山である、レユニオン島、フルネーズ火山の2003年の噴火活動に伴う、火山性地震、微動の解析を行っている。また、石川県の白山火山についても夏期に臨時観測を行っており、白山付近の地震活動及び震源位置を求めた。
並木は急速な減圧に対するマグマの反応について気泡を含むゲル状物質を用いた室内実験により調べた。実験の結果、急速な減圧に対するマグマの膨張速度は気泡含有量φ及び過剰圧ΔPの積φΔPに依存する事が分かった。また、マグマの破砕が起こる条件はマグマの膨張速度により、破砕が起こる臨界膨張速度がある事を示した。

研究成果

• [文献書誌] Sumita, I., P.Olson: "Experiments on highly supercritical thermal convection in a rapidly rotating hemispherical shell"Journal of Fluid Mechanics. 492. 271-287 (2003)
• [文献書誌] Namiki, A., Hatakeyama, T., Toramaru, A., Kurita, K., Sumita, I.: "Bubble size distributions in a convecting layer"Geophys.Res.Lett.. 30. 10.1029 2003GL017156 (2003)
• [文献書誌] Namiki, A.: "Can the mantle entrain D"?"Journal of Geophysical Research. 108 CB1011. 10.1029/2002 JB002315 (2003)
• [文献書誌] Saiga, A., Y.Hiramatsu, T.Ooida, K.Yamaoka: "Spatial variation in the crustal anisotropy and its temporal variation associated with the moderate size earthquakes in the Tokai region, central Japan"Geophys.J.Int.. 154. 695-705 (2003)
• [文献書誌] Ishihara, Y., S.Tsukada, S.Sakai, Y.Hiramatsu, M.Furumoto: "Miyako fireball trajectory determined from shock wave records of a dense seismic array"Earth, Planets and Space. 55. 9-12 (2003)
• [文献書誌] 高橋直季, 三宅学, 平松良浩, 古本宗充, 平田通: "白山火山近傍での微小地震観測"地震. 56. 89-94 (2003)