本研究は2000年に噴火した有珠山周辺の住民の噴火に対する意識をアンケート調査で把握し、それを分析し地域防災計画のあり方を検討することを目的としている。今年度は虻田町を対象とした。回答が地域的に偏在しないよう自治会を活用して配布した。配布数は233通で有効回答数は149通(回収率64.8%)となった。アンケートは、1.火山防災マップ(ハザードマップ)に関する設問、2.噴火経験について、3.現在の有珠山に対する危険性の認知、4.将来の有珠山の噴火予測、5.属性、で構成されている。回答と地域特性の関連について解析するため回答者の住所をもとに住宅地図や、ハンディタイプのGPS(汎地球測位システム)を用いて回答者の位置を特定した。アンケート結果は以下のとおりである。1.多くの住民が影響を受け、家屋など被害への危険性を認知しているが、人命の危険は十分に認知していない。多くの住民は複数回の噴火を経験しているが今後も住み続ける意思がある。2.前回の噴火(1977年)のあと作成されたハザードマップは6割の住民しか認知していなかったが、危険地域や避難経路を知らせる効果はあった。3.専門家による記者会見などの報道で噴火による災害の種類や規模を認識できた。4.的確な情報提供によって住民は被害を過大に評価することはない。以上からハザードマップは噴火の危険性を住民に伝えることに一定の効果のあることが明らかになった。来年度は他の自治体に対しても同様なアンケートを実施し、地域的な意識の違いについて明らかにして地域特性を反映した防災計画のありかたについて検討をすすめていく。噴火からすでに3年以上経過(アンケート実施時点)しているため、噴火時の意識の変化などについては正確に把握できたとはいえない。そこでアンケートへの記述だけではなく対面調査(ヒアリング)などの実施も必要であることが明らかになった。
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