研究概要 |
火山噴火のなかで,最も激しい噴火様式とされているマグマ水蒸気噴火の機構を解明する目的で,溶融金属と水を用いて実験的に再現して,その現象を撮影して観察・解析した.約700℃,1〜4gのすず液滴を常温の水に滴下し,反射光によって高速度ビデオカメラを用いて爆発の過程を撮影した.その結果,滴下時に液滴が膜沸騰蒸気膜に覆われているが,水中に入りきる以前に蒸気膜が消滅して,自発核生成によると思われる沸騰が観察される.蒸気爆発は自発核生成による沸騰の開始とともに起こる場合と蒸気爆発に進展しない場合がある.液滴の変形にともなって膜沸騰蒸気膜が再形成される現象が観察された.蒸気膜崩壊から高温液の微細化を伴う蒸気爆発現象へと進展していくのはその後になることがある.このことは自発核生成による沸騰の開始がそのまま蒸気爆発の発生につながるものではないと言うことを意味しており,蒸気爆発の発生に,自発核生成による沸騰が必要不可欠とはいえないことを意味する.蒸気爆発の発生に,自発核生成による沸騰が不可欠ではないということは,マグマのように極めて高温で,膜沸騰状態崩壊時には固体になる物質でも,高温液表面あるいは液滴の変形を引き起こすようなダイナミックな蒸気膜や蒸気泡の運動があれば蒸気爆発へ進展していく可能性があることを示すものである. あわせて蒸気爆発の激しさに関与する物性値や落下条件について無次元解析を行い,熱拡散率,動粘性系数などが現象に大きく影響することを示した.ここからマグマが極めて自発的な蒸気爆発を発生しにくい物質であることを定量的に示した.
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