研究概要 |
1.神経堤細胞の分化制御において重要なシグナルの検索 エンドセリン-1(ET-1)欠損マウス(ET-1-/-)骨格の形態観察により、下顎における骨・軟骨が上顎構成成分の鏡像重複であることを見出した。さらに、上顎弓(Prx2,Bmp4)および下顎弓(Pitx1,dHAND, eHAND)の遺伝子マーカー発現の解析から、ET-1-/-の下顎弓の遺伝子発現パターンが上顎弓のパターンをとることを明らかにした。また、ET-1-/-胚において第1,2鰓弓の背腹軸パターン形成の決定因子であるDlx5,6の遺伝子発現が第1,2鰓弓腹側(第1鰓弓では下顎弓)で特異的に消失していた。以上より、ET-1が形態形成因子として神経堤細胞に作用し、ホメオティック遺伝子Dlx5,Dlx6を誘導することによって、鰓弓の背腹軸方向のパターン形成を制御していることが証明された。 一方、鰓弓形成におけるET-1シグナルの下流としてDlx6→dHANDのシグナル経路があるが、DNAチップ等の結果により、その標的遺伝子の一つとしてカルパイン6遺伝子を同定した。その発現は、鰓弓・心臓などでdHANDと一致すること、細胞骨格に作用して細胞形態や増殖に影響する因子であることを明らかにした。 2.核移植を用いた神経堤細胞の可塑性の評価の方の検討 核移植後のリプログラミングという新しい視点から幹細胞の分化制御機構の理解をさらに深めるため、予備実験として神経堤細胞をドナーとした核移植を行った。マウス培養神経堤細胞は培養開始直後、分化条件下での培養7日後ともに、マウス胚由来線維芽細胞に比べて高い胚盤胞形成率を示し、胎仔形成をも示した。胚盤胞形成率はES細胞からの核移植の成績と大きく変わらないものであり、神経堤細胞がリプログラミングに対して高い感受性を持つことが示された。
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