研究概要 |
究極の幹細胞は卵である。そう考えると卵の分化機構や卵の特徴が解明されれば、細胞の初期化機構の解明につながると考えられる。カエルを初めとする多くの動物卵では、卵成熟から初期胚にかけて非常に特殊な細胞分裂を行う。これらの特殊な細胞分裂を行うため卵母細胞は、卵形成過程において、細胞周期調節因子の発現を特異的に調節しその準備をしていると考えられる。事実、ツメガエル卵においては、卵成熟の開始から進行のため存在してはならないWee1は、卵形成過程で徐々に消失していくし、卵成熟促進因子(Maturation Promoting Factor,MPF)は、卵形成過程で合成され、成熟した卵母細胞に不活性化した状態(pre-MPF)で存在する。しかしながら、pre-MPFがいつから合成され、どうやって不活性化されているかよく分かっていない。そこで今回我々は、ツメガエル卵を用いて、主にpre-MPFの形成に焦点をあて、卵成熟開始の正、負の調節因子の卵形成過程における挙動を調べた。Cdc2と卵母細胞におけるその調節サブユニットであるCycB2は、両者ともst Iから存在した。Cdc2のThr14,Tyr15のリン酸化されたバンドがやはりst Iから検出されることから、pre-MPFはst Iから形成されていることが示唆された。卵成熟の負の調節因子であるMyt1,Chk1,Cds1は、すべてst Iから検出され、卵形成の初期にその量が主に増大した。それに対して、卵成熟の正の調節因子であるCdc25C,MEK,MAPKは、st Iから存在するが、その量は、卵形成の後期に主に増大した。Northern blottingの解析から、それらの合成は、主に翻訳レベルで調節されることが示唆された。これらの結果から、pre-MPFが卵形成過程完了まで活性化しないように、卵成熟の負の調節因子が正の調節因子に先立って合成されることが強く示唆された。
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