研究課題
本年度は、初年度の研究成果に基づいて得られたヒト子宮内膜side population (endometrial SP : ESP)細胞の組織幹細胞特性について、細胞分子生物学的アプローチを用いて、より詳細な検討を行った。分離したESPおよびnon-ESPを免疫不全マウスへ移植したところ、non-ESPとは異なりESP移植部位において、内膜特性のひとつであるプロゲステロン受容体が陽性の腺管構造を有する子宮内膜様組織の再構築が認められた。現時点で24個体に移植を行ったが、内膜組織の各コンポーネント(例えば血管のみ)より成る様々な組織も構築されることが判明し、その多様性はnon-ESPに比べてESPで高かった。ESPおよびnon-ESPよりRNAを抽出し、GeneChip^<【○!R】>による遺伝子発現プロファイリング解析を行ったところ、non-ESPに比べてESPに強く発現している遺伝子群に、ABCG2やCD34などの一般幹細胞マーカーが含まれていた。ESPのin vitroでの単独培養は困難であったが、様々な細胞との共培養系でESPは増殖可能であり、特にOP-9細胞をフィーダーにした場合、安定的な増殖が得られただけでなく、ESPは神経様細胞などの異なる細胞系譜へ分化転換し得た。以上、移植実験、発現遺伝子プロファイル、およびin vitro培養実験の結果より、ESPが高い幹細胞的特性を有することが明らかとなった。同様のアプローチで雌性生殖器官のひとつである子宮筋よりSPを分離し解析した結果、子宮筋SPも組織幹細胞ポテンシャルを有するというデータを得ている。このように雌性生殖器の幹細胞は、生殖器由来疾患の発生・進展機構の解明、ならびに各組織に共通する組織再生メカニズムの解明に貢献するのみならず、雌性生殖器の機能不全・欠損に対する再生医療における医療資源になり得る可能性が示された。
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