研究概要 |
本研究では,哺乳動物の卵細胞質に含まれる初期化因子が,活性化刺激を付与後,どの程度保持されているのかを検討した。 方法:(1)ウシMII期未受精卵に電気刺激による活性化刺激を付与し,その後,1から6時間目に体細胞を核移植し,胚盤胞への発生率を検討した。(2)マウスMII期未受精卵に活性化刺激を付与後,1から6時間目にES細胞を核移植し,胚盤胞への発生率を検討した。 結果:(1)G0期のドナー細胞を用いた場合は,除核MII期卵子に活性化刺激後1時間目で胚盤胞への発生率は有為に低下した。それに対し,M期のドナー細胞を用いた場合は,活性化刺激後5時間目までは高率に胚盤胞へ発生し、6時間目で有為に低下した。(2)M期に同期化したES細胞を活性化した除核MII期卵子へ核移植したところ,2時間目までは高率に肺盤胞へ発生したが,3時間目以降では有為に低下した。 以上の結果より以下のことが考えられる。G1期のドナー細胞を用いた場合に活性化刺激後1時間目で胚盤胞への発生率が低下したのは,卵細胞質中に含まれるMPFの活性が低下することにより,premature chromosome condensation (pec)が起こせなくなったためと考えられる。そしてMPFの活性が低下した卵細胞質にM期のドナー細胞を融合した場合は胚盤胞へ発生したことから,MPFは初期化因子として直接的に働いている因子ではない可能性が示唆された。現在,初期化因子を含むと考えられる卵細胞質と含まないと考えられる卵細胞質との間で2次元電気泳動を行ない,タンパクレベルでの検討を行なっている。マウスを用いた実験でも同様の検討をおこなう予定である。
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