研究概要 |
マウス始原生殖細胞をsteel factor,LIF,bFGF存在下で培養すると、多能性幹細胞であるEG細胞に変化するが、これがどのような分子機構によっているかは明らかでない。これを明らかにすることを目的に、本年度はまず始原生殖細胞がEG細胞に変化する経過を詳細に観察した。始原生殖細胞と多能性幹細胞で特異的にGFPを発現するOct4-GFPトランスジェニックマウスの8.5日胚始原生殖細胞を培養し、蛍光顕微鏡下で経時的にGFP発現細胞の挙動を観察した。その結果、培養開始後7日目までは移動形態を示す多数の始原生殖細胞がコロニーを形成しているが、8日目になるとGFP陽性細胞のほとんどが消失し、少数の単一細胞のみが残り、それらがその後、形態が特徴的なEG細胞のコロニーを形成した。このことから、培養後8日目ころに始原生殖細胞からEG細胞への変化が起こると考えられた。また、細胞の性質と密接に関わっているクロマチン構造を核染色により調べると、始原生殖細胞ではまわりの体細胞やEG細胞に比べてヘテロクロマチンが少なく、それに対応してDNAはゲノムワイドに低メチル化状態にあり、さらにde novo DNAメチルトランスフェラーゼのDnmt3a,Dnmt3bも周りの体細胞に比べて、始原生殖細胞では発現が顕著に低かった。特にDnmt3bはEG細胞では始原生殖細胞より発現が高く、これらの結果からDNAメチルトランスフェラーゼの発現上昇とそれに伴うゲノムワイドなクロマチン構造の変化が、始原生殖細胞からEG細胞への変化に係わっている可能性が示唆された。
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