研究概要 |
基底膜の主要糖タンパク質であるラミニンは、糖鎖を介した様々な生物活性に関与している。本研究では、特にプロテオグリカンの糖鎖と相互作用するラミニン機能部位の解析とその作用メカニズムの解明を目的としている。ラミニンα1鎖Gドメインのシンデカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)結合部位の同定の研究では、α1鎖Gドメインの組換えタンパクと113種類の合成ペプチドを用いて結合部位のスクリーニングを行った結果、AG73(RKRLQVQLSRT)とAG75(GVIYYVAHQNQM)の2種類の機能ペプチドを同定した。これらのペプチドは組換えタンパクのヘパリン結合、シンデカン結合を阻害し、シンデカンを介した細胞接着活性を有することがわかった。これらの研究結果は、Suzukiら、Biochemistry, 42:12625-12633, 2003に報告した。また、5種類のラミニンα鎖(α1〜α5)の相同部位由来の機能ペプチドの解析を行った結果、α2鎖由来のペプチド(EF-2:DFGTVQLRNGFPFFSYDLG)とα4鎖由来のペプチド(EF-4:DFMTLFLAHGRLVFMFNVG)がシンデカンの糖鎖との相互作用を介した細胞接着活性を有することがわかった。これらの研究結果は、Suzukiら、J.Biol.Chem., 278:45697-45705, 2003に報告した。また、ラミニンα5鎖のペプチドがCD44とコンドロイチン硫酸を介して結合していることが最近明らかにすることができた。(現在Cancer Res誌revise中)。今後は今までの研究をさらに発展させるべく、他の機能ドメインからの機能ペプチドの探索と、ヘパリンやヘパラン硫酸だけでなく様々な糖鎖を用いた解析を行い、ラミニンのプロテオグリカンの糖鎖を介した生物活性の作用メカニズムを解明していく。
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