ヘパラン硫酸プロテオグライカンは哺乳動物の細胞表面や基底膜に広く存在し、多くの種類のタンパク質と特異的な相互作用を示すことが知られている。特に細胞表面においては線維芽細胞成長因子を代表とするヘパリン結合性成長因子、サイトカイン、他の細胞外マトリックス分子等との相互作用を介して、成長因子のシグナル伝達、細胞接着、凝集といった細胞認識機構に深く関与している。本研究では特に細胞外マトリックスにおけるヘパラン硫酸プロテオグライカンの代謝・分解の調節機構、細胞表面分子との相互作用、またこの分子の持つ細胞外マトリックス形成調節機構について研究する。本年度はヘパラン硫酸プロテオグライカンの細胞内分解過程で要となるヘパラネース(ヘパラン硫酸特異的エンドベータグルクロニダーゼ)に注目し、その酵素タンパク学的性質、モノクロナル抗体調製、細胞内局在に関する実験を行った。 蛍光タンパク(GFP)/ヘパラネース融合タンパクの発現ベクターを作成し、各種の培養細胞にトランスフェクトして融合タンパクを安定して発現する細胞株を複数系列得た。タンパク発現は蛍光顕微鏡による解析および発現細胞抽出液のヘパラネース酵素活性測定によりモニターした。ヘパレネース発現細胞は核を除く細胞質全体に蛍光を示し、ヘパラネース活性上昇を認めた。次年度はこれらの細胞株を用してレーザー共焦点顕微鏡を用いた細胞内分布に関する詳細な解析、ヘパラネース部分ペプチドの発現部位同定などをさらにすすめる。また、各種の細胞内輸送阻害薬を用いて、ヘパラネースおよびヘパラン硫酸プロテオグライカンの細胞内輸送に関する解析も行う。
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