研究概要 |
本研究では,糖鎖修飾による小胞体品質管理制御のメカニズムを明らかにすることを目的としている.異常タンパク質のO-マンノシル化は,小胞体におけるタンパク質の変生修復の機構のひとつであると考えられる.O-マンノシル化をうけることによって異常タンパク質は凝集体を形成しにくくなり,O-マンノシル化を受けた異常タンパク質は細胞外に分泌されるようになる.本年度はO-マンノシル化による異常タンパク質の修復機構について以下の解析を行なった.pmt2変異とder1変異(またはcue1変異)の両方を持つ2重変異株は,O-マンノシル化と小胞体関連分解(ERAD)の両方に欠損を持つ.この株では,恒常的な小胞体ストレス応答の活性化と,ツニカマイシン処理に対する感受性の上昇が観察された.また2重変異株では,O-マンノシル化を受ける異常タンパク質の一つであるΔproとhsp70ファミリーの分子シャペロンBiPが小胞体内で凝集体を形成していることを示唆する局在を示した.以上の結果は,O-マンノシル化とERADは小胞体における異常タンパク質の処理機構として相補的な関係にあることを示唆している.本年度はさらに,Δproを基質としたO-マンノシル化反応のin vitro再構成系の確立も行なった. 本研究では,ERADシグナルとなる糖鎖構造を認識する因子の有力な候補である酵母Mnl1pの機能解析も目的としている.われわれは,ゲノム配列の解析から,シロイヌナズナのMnl1pホモログを見いだし,その機能が多細胞生物の個体レベルでどのような意義を持つかについても解析を行なっている.本年度は,GFP融合タンパク質を用いた解析から,シロイヌナズナMnl1pホモログが小胞体に局在することを示すとともに,RNA干渉を利用したノックダウンの系の作製を行なった.
|