膜蛋白質や分泌蛋白質の多くはアスパラギン結合型(N型)糖鎖が付加している。このN型糖鎖の持つ新しい機能を解明するために、糖鎖結合蛋白質のスクリーニングを行った。その結果、ユビキチンリガーゼ複合体の標的識別分子であるF-box蛋白質が単離された。ユビキチンは活性化酵素、結合酵素、リガーゼからなるユビキチン系により標的蛋白質に共有結合し、この反応が繰り返されることにより形成されるポリユビキチン鎖が標的蛋白質のプロテアソームによる分解マーカーとして作用する。リガーゼは標的蛋白質を選択する最も重要な酵素であり、膨大な多様性を持つ。中でもSkp1-Cullin1-Fbox蛋白質-Roc1からなるSCF複合体は他のタイプのE3より圧倒的に多く、標的蛋白質を認識・結合する唯一の可変ユニットF-box蛋白質がその多様性を担っている。今回、我々が単離した蛋白質はF-box蛋白質の一つFbx2と同定され、成体マウスの脳に特異的に発現していた。最初に、組換え蛋白質を用いた試験管内再構成実験でこのリガーゼ複合体はN型糖鎖依存的に分泌糖蛋白質をユビキチン化することを確認した。次に、神経細胞内でFbx2に認識される基質蛋白質の一つを接着分子であるインテグリンβ1と同定した。さらにFbx2は高マンノース型糖鎖を特異的に認識することが明らかにされた。細胞分画実験によりFbx2は細胞質においてプロテアソーム阻害剤存在下インテグリンβ1と結合することが判明した。以上の結果より、Fbx2の機能は小胞体より細胞質に逆行輸送された変性蛋白質やポリマー形成不全蛋白質の小胞体関連分解への関与が考えられた。
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