研究課題
本研究では、従来個別分散化してきた中世考古学の総合化・体系化を目指して、周辺諸科学と「学融合」を行うことにより新領域「中世総合資料学」を樹立することを目的とする。中世考古学における膨大な資料的蓄積と研究は、個々の分野にとどまり、相互の連携が少なく、かつ、文献研究との接点も、いわゆる個別的な段階に終始し、十分に成果が生かされていない弱点を内包している。本研究の最大の特色は、総合的研究を実施することにより、日本中世史・東洋史・建築史・民族学・歴史地理学・理論考古学から投げかけられた問題提起を受け止め、古環境学・形態人類学等と関連して、中世考古学に主軸をおきつつ、中世歴史像の再構築を「中世総合資料学」という新領域を創生した上で試みようとするものである。本年度は、本研究の初年度であり、学融合に向けた各分野の基盤作りと方法論について検討を重ねた。まず9月14日に第1回総合会議を中央大学駿河台記念館において行い、各計画研究班の考古学を中心とした関連諸分野の。11月30日に第1回公開シンポジウム「中世総合資料学の可能性:新しい学問体系の構築に向けて」を中央大学駿河台記念館で開催した。考古学をはじめ、文献史学・建築史学・自然科学の分野から、学融合の可能性と方法論について発表を行った。2月7日に第2回総合会議を行った。今年度の各計画研究の研究成果の発表を行った。千田嘉博を中心としたフランスにおける学融合の動向調査、北海道上ノ国勝山館のCG製作についての報告、矢田俊文を中心とした新潟県中条村の奥山荘下町坊遺跡D地点の文献史と考古学の両分野からの研究、酒井英男と中村俊夫を中心とした自然科学による研究では、考古地磁気と14C年代測定法による成果、池田栄史のグループによる玄界灘における水中考古学の成果、荻野繁春を中心とした考古資料のデータベース化に関する研究などの報告がなされた。
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