研究課題/領域番号 |
15068204
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30107718)
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研究分担者 |
三辻 利一 大谷女子大学, 文学部, 教授 (40031546)
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キーワード | 中世考古学資料 / 陶磁器分析 / 分析保存科学 / イオンクロマトグラフィー / ICP発光分光分析 / 蛍光X線分析 / 生産地推定 / 劣化機構 |
研究概要 |
多種多様にわたる中世陶磁器に関して、これまでの考古学・美術史学的な調査とその成果と実際の陶片資料の科学分析との相関関係を体系化し、生産や流通、用途等に関する研究のための基礎的データの蓄積を図るとともに学融合を目指した陶磁研究の方向性を確立することを目的とした。陶磁器以外の関連する諸種考古学資料に基づく検討も不可欠であり、様々な考古遺物・遺構等から捉えた材質調査、構造調査、劣化機構の解明が基本とした分析保存科学的研究を行った。 本年度は、中世考古学資料の保存と活用の観点から埋蔵・収蔵環境調査や保存処理法の検討、劣化状態、劣化機構の解明等を行うためにイオンクロマトグラフ法による陽・陰イオンの定量について基礎的研究を行い、実在資料への適用を可能とした。一方、陶磁器資料の分析に関しては、これまで機器中性子放射化分析により定量された資料についてICP発光分光分析を行い、本法の正確さと精度が高く結果が得られ、さらに、両者の分析法で共通のナトリウム、鉄については、極めて高い相関性が認められた。ICP発光分光分析と蛍光X線分析を併用して中世陶磁器の生産と流通、その用途などを追究するために、国内外の中世陶磁器資料の組織的・系統的選定を行い、基礎的データの蓄積を行った。また、陶磁器の材料学的特徴を見出し、素地土の加熱実験を通して、陶磁器焼成技法の解明し、焼成技術的な観点より中世陶磁器の特徴を見出せる可能性を示した。さらに、中世陶器への前提としての日本鉛釉陶の研究として、陶器胎土の化学組成、釉薬と着色剤に関する非破壊分析へと発展させた。本年度は、諸種分析法が多岐にわたる中世考古学資料への適用に関してその有効性と方向性が確立され、次年度以降の研究の発展が期待できることが示された。
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