平成15年度の本計画研究では、中世土器・陶器編年・流通研究会を研究協力者とともに立ち上げ検討を進め、4回の研究会を実施した結果、今年度の成果として次のことが挙げられる。1.主要窯業生産地各地での編年研究は、この数年間により詳細な体系が進んでいることが確認でき、現状でのまとめを早急に行うこととしたこと。2.各地の土器生産が明らかにされるなかで、畿内系土器生産の技術が地方へ間接的にせよ伝播している系譜が確認され、背景に広域流通をめざす陶器生産地の拡大と地方小生産地が脱落していくことと関係することがより明瞭になってきたこと。3.中世遺跡の時代認定に大きな役割を果たしてきた東海地方の窯業生産地での日常食器としての山茶碗の生産も地域のなかで小産地毎に違いがあり、そうした違いと年代観の検討を進め、より精度の高い結果が得られたこと。4.広域流通をみせる窯業地製品が、中世という時間的な経過の中で、地域によって流通製品が移り変わるという現象が展開されることが明らかにされたこと。今後その理由の解明を継続的に行い、地域間流通を全国レベルで検討する材料にしていく。以上の成果に立って編年観の体系化と合わせて流通の背景を検討することを関東から瀬戸内、西日本へ広げ、生産地及び遺跡出土の土器・陶器の一括資料をつき合わせる作業を継続する。その過程で、すでに問題提起されている畿内及び西日本でのこれまでの年代観を引き上げる修正意見について年代的な齟齬はないか等の検証をし、編年観の横のつながりを歴史学との検討を重ねて進展させていきたい。一方、もう一つの課題である、生産技術解明のための材料として、国指定史跡の愛知県瀬戸市小長曽古窯の窯体構造の解明のためCG復元を行い、研究者間で討議を行い、中世陶器生産技術の構造的な解明を果たすべく第1段階の作業を行った。
|