平成16年度の本計画研究は、引き続き中世土器・陶器の編年等研究会を研究分担者、研究協力者とともに実施するとともに、前年度実施した研究会の成果を印刷、出版した。今年度の成果として次のことが挙げられる。1.昨年の東北の土器、東海の山茶碗に続き、東日本全体の煮沸土器について編年検討作業を行った結果、地域ごとの形態差、使用期間の差などが明らかにされ、技術系譜の違いが明瞭となった。このことは西日本にも普遍されることも研究会で明らかにされ、今後さらに解明させていくこととなった。2.瀬戸内をめぐる流通に関する公開シンポジウムでは、文献史学、地理学、地学研究者との連携による研究発表と討論会により、中世の港湾とみられる遺跡に地域流通の拠点遺跡と中継地的遺跡があることが明らかにされた。そしてこの現象は、瀬戸内のみならず太平洋岸、日本海沿岸域でも確認でき、しかも土器編年により時期的に移動することも明瞭となった。3.最も南端に位置する奄美・徳之島のカムイヤキについて、列島内での位置づけを検討する研究会では、九州との技術的な繋がりよりも朝鮮半島との技術伝播が強いことが明瞭となったが、その流通範囲は南西諸島から九州南部まで及んでおり、広域流通をみせる一大窯業地であることが判明した。4.以上の研究成果をもとに17年度に地域編年の体系化を図る全国シンポジウムを開催することとし、その準備研究会をもった。そこでは現時点での生産地編年及び地域別の遺跡出土一括資料による編年を集約し、技術系譜を解明するシンポとすることで参加者の賛同を得た。一方、もう一つの課題である生産技術解明のための古窯復元として、昨年度作成した国指定史跡・愛知県瀬戸市小長曽古窯の三次元復元について、研究分担者との討議を重ね、古環境や構造の修正を行い、中世陶器生産技術の窯体構造の実際と焼成法の解明にあたった。
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