研究概要 |
本研究は、大学から排出される実験廃棄物の処理法について「超臨界水酸化反応」と「微生物処理」をモデルに取り上げ、焼却法に代替する無害化処理技術としての適用性について実験的に検討することを目的としている。本年度の成果は以下の通りである。 1.東京大学柏キャンパスに現有する超臨界水酸化実験廃液処理施設を用い、モデル廃液及び実廃液の分解実験を行った。可燃性有機廃液や無機物が共存しない有機系水溶液などの実廃液処理では、有機物が短時間に完全酸化分解され、廃液処理技術としての同手法の有効性が実機レベルで証明された。無機塩や重金属を含む廃液についても、廃液中の有機物は概ね完全分解されるが、塩濃度対策や処理効率向上に関しては引き続き検討が必要であることが明らかとなった。 2.チトクロームP450(以下P450)誘導剤を単一炭素源として添加した培地を用いて、環境中からP450産生細菌を分離することを試み、数種のP450産生細菌の分離に成功した。これらの細菌のうち、土壌中から分離したRhodococcus sp. strain EP1を用いて有害有機化合物の分解について検討した。EP1株は2-ethoxyphenolを単一炭素源として生育したときにP450を産生した。EP1株の無細胞抽出液を用いて、排水基準が定められている物質を中心に13種類の有害有機化合物の分解を検討した結果、benzene、xylene、toluene、1,3-dichloropropene、carbon tetrachloride、1,1,1-trichloroethaneが分解できることが明らかとなった。EP1株が産生するP450は多種類の有機化合物を含有する実験排水の処理に応用できる可能性がある。一方、ジクロロメタン分解菌PD11株、及び1,3-ジクロロ-2-プロパノール分解菌PY1株の分離に成功した。
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