教育研究で使用する化学物質の環境影響と作業者への健康影響を把握し、信頼性を向上させるための手法を検討した。 (1)環境への包括的な影響を管理するためのPRTR(化学物質管理促進)制度での見積もりについては、化学物質の購入量と、廃液・排水の量の把握、それらの分析などから、クロロホルムなどの揮発性の高い溶媒については、40%程度が大気へ放出されている可能性を示した。とくに、クロロホルムについては、大学等の高等教育機関は、全国の事業上の中でも著しい寄与をしているので、注意が必要である。 (2)大気への放出に関連する操作として、揮発性溶媒を用いた蒸発濃縮過程がある。近年、冷却捕集が常識になってきたが、冷却トラップをポンプの前段に設置する場合と、後段に設置する場合で、捕集効率が大きく異なる。すなわち、大気圧に近い圧力での冷却捕集が効果的である。近年、冷却捕集装置の使用が、急激に広まりつつあるが、圧力に注意を払うべきであることをここで指摘したものであり、環境安全学の実践的教育プログラムの1テーマに数えられるものとなる。 (3)作業者への影響を考える上では、通常の作業環境測定に加えて、短時間での曝露モニタリングを実施した。操作中では、作業者の周辺で、化学物質濃度のリスクレベルにして、10の-4乗を超えることがしばしば観察された。しかしながら、リスク量は曝露時間にも関連する。この関係をわかりやすく表現する指標として、矩形近似法による損失余命の計算方法を提案した。これは、台形の面積公式を用いて、損失余命を推定するものであり、曝露時間とリスク量が比例することが明確になり、また、複数のリスクを相対的に評価できる。ガンリスクに着目して試算したところ、喫煙がベンゼン267mg/m^3への曝露と等価であることを示した。
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