研究課題/領域番号 |
15071202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 孝太郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 助教授 (80321587)
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研究分担者 |
半田 利弘 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (40202270)
祖父江 義明 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (10022667)
長谷川 哲夫 国立天文台, 電波天文学研究系, 教授 (50134630)
関本 裕太郎 国立天文台, 電波天文学研究系, 助教授 (70262152)
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キーワード | サブミリ波 / テラヘルツ / 銀河形成 / 星間物質 / 超伝導受信機 / 爆発的星形成 |
研究概要 |
研究第4年度となる平成18年度は、昨年度に引き続き、ASTEを用いた本格的なサブミリ波帯分光観測を進め、また、これまでの成果について、多数の査読付き論文を出版することができた。 局所銀河群において最も明るい超巨大HII領域の一つ、NGC604の全域をカバーする、かつてない広さと高い品位を併せ持つサブミリ波帯CO(3-2)輝線画像を取得した。超巨大HII領域は、より遠方銀河における爆発的星形成(スターバースト)を理解する上で重要な構成要素である。そのデータを、野辺山45m鏡により取得したCO(1-0)輝線データと突合せて詳しく解析したところ、NGC604の中心に存在する星団を取り巻くように、「シェル状の構造を持ち、高いCO(3-2)/CO(1-0)輝線強度比(1を超える)を示す高密度分子ガス」が存在していることを発見した。これは、初代の爆発的星形成により誕生した星団が、超新星爆発や星風によって、初代星形成の母体となった分子雲を吹き飛ばしてシェル状に圧縮し、そこで星の材料となる高密度分子ガスが形成され、その結果、第二世代の大質量星形成がトリガーされている、と考えられる。このような誘発的星形成に起因するシェル状構造の高密度分子ガスを観測的に捉えたのは初めてである。 このほかにも、複数の銀河の広域イメージングサーベイを進め、NGC986では、14kpcにも及ぶ巨大な高密度ガスの棒状構造が存在していることを発見した。このような巨大なガスの棒状構造は、非軸対称ポテンシャルにより、非常に短い時間で中心へ落ち込み、スターバーストを引き起こすと予想される。スターバースト直前の、極めて稀な状況を捉えることに成功したと考えられる。 また、ガンマ線バースト(GRB)をプローブとした星形成史の研究を進める基盤として、GRB母銀河における星形成を理解するため、PdB干渉計におけるGRB000418母銀河(z=1.1)における高感度なCO(2-1)輝線探査を行った。高感度な観測ながらCO輝線は検出されず、これまでに我々の観測した他のGRB母銀河での結果もあわせると、GRB母銀河には、星間物質に深く隠された星形成は存在せず、過去のサブミリ波観測による結果に重大な疑義を投げかけるものとなった。
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