研究概要 |
次の成果を得た。 1)「なんてん」による40週に及ぶ観測から、大小マゼラン雲の間をつなぐブリッジ部分において新たに7個の分子雲を発見し、ブリッジ全体での星形成率を推定したところ、20-30億年後に100万個以上の恒星を形成して1個の銀河となる可能性があることを示した。この成果は、天文学会、国際会議他で報告済であり、今後、天体物理学雑誌に論文掲載の見込みである。 2)米国バークレイのグループと協同で局所群中の銀河5個について一様な手法で巨大分子雲の物理量の解析を行い、質量分布他の基本的な物理量を推定した。これにより、少なくとも局所群の分子雲について、その性質は共通していることを見いだして国際会議における招待講演を行った(原始星と惑星5,2005年10月)。大小マゼラン雲の星形成について、光学的なデータに加えて電波連続波によるHII領域の観測結果を加え、個々の分子雲におけるより確実な星形成の同定を行った。この結果、光学的に同定されていなかった領域は1個のみであり、従来の結論に変化はないことを確認した。 3)銀河系の最外縁部における星形成活動を観測的に研究し、分子雲の存在量が、内側に比べて一桁程度少ないことを示した。原子から分子への変換効率が下がっており、星による重力的束縛力が低いことがその原因と考えられることを指摘した(Nakagawa et al.2005)。 4)NANTEN2望遠鏡のチリ現地での立ち上げ作業を進め、鏡面精度、追尾精度等の確認を進めた。追尾精度についてはほぼ目標が達成されているが、鏡面精度については、さらにホログラフィー等による精度の確認が必要であることが明らかになり、来年度前半に取り組む計画である。
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