研究分担者 |
荻田 典男 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (90211812)
高畠 敏郎 広島大学, 大学院先端物質科学研究科, 教授 (40171540)
伊賀 文俊 広島大学, 大学院先端物質科学研究科, 助教授 (60192473)
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教授 (10223596)
谷口 雅樹 広島大学, 大学院理学研究科, 教授 (10126120)
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研究概要 |
本計画班は,充填スクッテルダイトの格子物性及び電子物性を光学的手段で微視的立場からの解明と高効率熱電材料の探索することを目的とする。本年度は,以下に示す成果が得られた。 光学測定班は,充填スクッテルダイトRT_4X_<12>(R=希土類イオン,T=Fe,Ru,Os,X=P,Sb)のラマン散乱より,希土類イオンの2次のラマン散乱ピークの強度と振動数がカゴの大きさと相関を持つことを見出した。特に,カゴが大きい場合には希土類イオンの振動数が低温で低下する。この低温での振動数低下異常はスクッテルダイトのみならず,クラスレートR_8Ga_<16>Ge_<30>,KOs_2O_6,La_3Pd_<20>Ge_6等カゴ状結晶でも普遍的に観測され,4次の非調和項によるものであることを実験的に確立した。更に,R_8Ga_<16>Ge_<30>ではゲスト原子の非中心ラットリングが格子熱伝導率低下の要因であることも明らかにした。また,PrRu_4P_<12>ではPrイオンの結晶場励起も決定した。 熱電測定班は,AOs_4Sb_<12>(A=Sr,Ba)の単結晶育成に成功し,100K付近で電気抵抗が肩を示すことから,強い電子格子相互作用の存在を指摘した。原子量が著しく異なるCaとLaを充填した(Ca_<1-x>La_x)Fe_4Sb_<12>の熱伝導率は,一方だけの場合に比べて小さく,熱電変換物質としての高い特性を確認した。更に,Sr_8Ga_<16>Si_<30-x>Ge_xのSrの振動エネルギーと熱伝導率が,カゴの大きさと伴に減少することを見出し,低エネルギー非調和振動が熱伝導抑制に有効であると結論した。 放射光測定班は、A04班で育成した多結晶YbFe_4P_<12>について、硬X線(8keV)を用いた光電子スペクトルの再測定を行った。前回の測定で得られた結果、1)2価と3価のYbイオンの混在,2)低温での2価成分の増大,3)異なる電子状態をもつ2種以上のPの存在、は定性的に再現された。しかし,スペクトル形状は場所で大きく異なり、詳細な結論は得られなかった。今後,単結晶試料についての実験を行い,スペクトル形状についての知見を得る。
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