研究概要 |
ハイブリッド系導電体の開発としてπ-d相互作用に注目し、軸配位子を持つ金属フタロシアニン(Pc)を構成単位とした導電性結晶への磁性イオンの導入により、伝導電子の運動が変調され巨大な負の磁気抵抗を示すことを見出している。19年度は、一次元系であるTPP[M(Pc)L_2]_2について、軸配位子の交換による…およびπ-d相互作用への影響について実験および理論計算によって系統的に調べ、可変なπ-d系となることを見出した。また、一次元系についてはNQRの測定によって電荷の不均化が起きていることが示唆されたが、実際、不純物効果を調べたところ電荷の局在が不純物とは無関係であることが確認された。 また、電流-電圧特性の測定により低温において顕著な非線形性が観測され、これは不均化が融解した結果と解釈され、さらに磁気モーメントの導入によって、より高温から非線形挙動がかなり顕著に現れ、電場により抵抗が激減することが見出された。 また、π-d,π-f,π-d-f,d-fのヘテロスピン複合材料を目指した研究から、磁気的カップリングを定める実験手法に進展が見られ、以下の成果が得られた。(1)いくつかの4f-3d系単分子磁石を合成開発し、4f-3d間交換相互作用を決定した。量子トンネル効果の機構を明らかにした。(2)ラジカル-コバルト系(π-d系)単一次元鎖磁石から世界最高の保磁力(52kOe)を有する「硬い」磁性材料を開発した。(3)イオンラジカル塩で、ピリミジン-TTF-M系(π-d系)を構築した。常磁性半導体が見いだされた。 「DCNQI銀塩の光照射による局所的電気伝導性制御法の開発とその機構に関する研究」として、分子性伝導体の単結晶をデバイスとすることを見据え、接合子構造と同等な、局所的に伝導性が異なる"単結晶"に誘導する手法を探索し、特異な光応答についての知見を得た。
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