研究概要 |
当該年度では、主に以下の研究を行った。 1.直線状アニオンを用いたBDA-TTP塩の研究:β-(BDA-TTP)_2X(X=I_3,IBr_2)が圧力下で超伝導を示すことを踏まえて,BDA-TTPのIC1_2塩,AuBr_2塩,CuI_2塩,Au(CN)_2塩の作製を行った。β-(BDA-TTP)_2IC1_2の電気抵抗は,およそ50Kまで徐々に減少した後,急激に増加した。一方,β-(BDA-TTP)_2X(X=AuBr_2,CuI_2)とβ-(BDA-TTP)_5[Au(CN)_2]_2は半導体的挙動を示した。現在,これらのBDA-TTP塩における圧力効果を調べている。 2.電子相関制御を目的とした新規ドナーの合成:安定な金属状態を発現するBDH-TTPとEDDH-TTPに,電子相関の制御を目的とした化学修飾として,(i)ジメチル基の導入,(ii)ビス(メチルチオ)基での置換,(iii)環拡大,を施したドナー(DMDA-TTP、EDDM-TTP、MTDA-TTP、EDMT-TTP)の合成に成功した。今後は,これらの新しいドナーからどのような分子性導体が得られるかを明らかにし,化学修飾と電子相関制御との関係を系統的に調べる。 3.八面体アニオンを用いたDODHT塩の研究:β″-(DODHT)_2^X(X=PF_6,AsF_6,SbF_6)の常圧における基底状態は,アニオンサイズによって異なった輸送特性を示す。このアニオンサイズ依存性を詳細に検討するために,放射光を用いた回折実験を行った。その結果,圧力下で超伝導へ転移するPF_6塩とAsF_6塩では,電荷秩序に伴う超格子反射が確認された。さらに,アニオンサイズを変化させた時の超格子反射の観測に基づき,各塩の基底状態を考察した。
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