Brust法を用いた金ナノ粒子調製時の反応溶液において、ジチオカルバミン酸は金ナノ粒子の酸化還元過程に関与することを明らかにした。種々のpH条件下でナノ粒子の調製を行った結果、pHを制御することによりサイズ選択性と分布幅の大幅な改善ができた。 また、ドデカンチオールを配位子とし、Brust法により平均粒径2.3±0.3nmのドデカンチオール修飾金ナノ粒子(DT@Au)とピリジニウム塩、ドデカンチオールを混合し、窒素雰囲気下で加熱するとサイズ成長した分布幅の狭い金ナノ粒子が得られた。X線小角散乱により4nm及び8 9nmと見積もられ、規格化分散10%以内でそれぞれ作り分けて調製することに成功した。この方法は簡便で様々な配位子が吸着した金属ナノ粒子を原料として行うことができる。 以上の方法より、3nm、4nm及び8 9nmのサイズ領域の金ナノ粒子についてそれぞれ10%前後の規格化分散にまで粒径分布を狭めることに成功した。 化学吸着型配位子であるtert-ブチルチオフェノール(TBTP)を配位子としてBrust法により金ナノ粒子を調製した場合、1.6±0.16nmの平均粒径を持つことが分かった。分布幅をもつナノ粒子の精製分離法を検討するためにTBTPが吸着したナノ粒子をゲル濾過型液体クロマトグラフィーで精製する検討も行っている。また、この金ナノ粒子は^1H-NMRからTBTPと物理吸着型配位子であるTOABが共吸着していることが確認され、その積分比から、TBTPが(111)面に吸着し、TOABが(100)面に吸着していると推察された。また、TOABのみを他の配位子に交換可能であることも明らかとなった。このことから、この配位子を用いた金ナノ粒子に粒子間を連結できるような配位子を用いれば、ナノ粒子の構造体が構築できると考えられる。
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