研究課題
本年度の研究は、超高分解能光電子分光を用いて、新規な物性を示すより広範囲な有機系導体の電子状態を明らかにすることを可能にするための装置の改良と、d-電子・f-電子系と巨大π電子系が相互作用する代表例である金属内包フラーレンの紫外光電子スペクトル測定の二つに大別できる。装置の改良は主として真空紫外光源の変更に集約出来る。これまで使用していたHe真空紫外光源は、自作の直流放電型であり、光量に乏しく通常の有機試料から放出される光電子量としては最大およそ10^4 counts/0.2sec程度のカウントしか得られなかった。今回、マイクロ波放電による高輝度He光源を導入したことにより10^7 counts/0.2sec程度のカウントを得ることができるようになり、測定時間の短縮に貢献出来るようになった。本年度に測定した金属内包フラーレンは、C_<82>ケージのフラーレンとしてTi_2C_2@C_<82>の2種の構造異性体、Y_2@C_<82>(III)、Lu_2@C_<82>(II)、Lu_2C_2@C_<82>(II)、Ca@C_<82>の2種の構造異性体などであり、C_<78>ケージとしてLa_2@C_<78>がある。Ca@C_<82>は試料量が少なかったため、信頼性にあるスペクトルを測定することはできなかったが、他のフラーレンについては十分に信頼が置けるスペクトルを測定することができた。これらの中でY_2@C_<82>とLa_2@C_<78>については、解析が終了した。Y_2@C_<82>と類似構造をとっているY_2C_2@C_<82>との比較から、ケージ内に内包している炭素原子は内包原子からケージに移動する電子量を制御していることが明らかとなった。また、La_2@C_<78>の構造はTi_2C_2@C_<78>と同じではないかと考えられてきたが、電子状態は両者間で大きく異なっておりこれら2種のフラーレンのケージ構造は異なっている可能性が大きいことが明らかとなった。
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