研究概要 |
シンクロトロン放射光を利用して金属内包フラーレンSc_3N@C_<78>,La_2@C_<80>,Lu_2@C_<80>,Ce_2@C_<80>,Sc_2C_2@C_<82>などの紫外光電子分光スペクトルを測定することができた。これらフラーレンはすべて炭素数や、ケージの対称性などが異なっているため、得られたスペクトルは互いに異なっているものであった。これは、これまでの「同じ炭素原子数からなるフラーレンであってもケージの対称性が異なれば、異なった電子状態をあたえる」という経験則と抵触しないものである。ところで、M_3N@C_<78>(Mは金属を代表)系の紫外光電子スペクトルはドイツドレスデンの研究グループにより精力的に測定されているが、今回測定したSc_3N@C_<78>もこの範疇に属するものであり、M_3N@C_<78>系と同じような電子状態をとるものと予想されたが、得られたスペクトルは微妙に異なっているものであった。これは、ほかのM_3N原子団と異なりSc_3Nでは原子団のサイズが小さいため、C_<78>ケージとの相互作用が小さく、フラーレンケージの電子状態に余り大きな影響を与えないためであると推測された。一方、内包原子からケージへの電荷移動数が他のM2C2@C82系に比べて小さいと予想されたSc_2C_2@C_<82>のスペクトルは同じ対称性を持つ他のM_2C_2@C_<82>系フラーレンと同じであったところから、内包フラーレンの電子状態はまだ、統一的といえる電子状態に関する知見が集積されていない状態であることも判明した。以上のように、フラーレンのπ電子と内包金属の電子相関はまだ解明すべき点が多いことが明らかとなった。
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