本申請では高圧下における物性測定を行うため、圧力を印加し保持する高圧セルの使用が必要不可欠である。従来、使用されてきた高圧セルはBeCuを材料に用いたクランプ式のものであり耐圧が2GPa前後であった。これ以上の圧力下での電子相探索のため、当A01班、村田恵三氏の協力を得て、新構造材料を用いたセルのテストをまず行った。 その結果、新型セルを用いることにより、旧来のBeCuセルの耐圧を越える3GPaに到達することができ、より広い領域での物性測定が可能となった。 この圧力セルを用い、常圧下では電荷秩序形成によって絶縁化している1/4-filling系有機導体(DI-DCNQI)_2Ag塩の高圧力下での物性実験に取り掛かった。特に従来使用していたBeCuセルでは耐圧の関係で測定できなかった2GPaを越えるような圧力を中心に調べた。 その結果、より高圧領域まで、この物質に関する温度-圧力相図を得ることができた。2.3GPaでは測定下限温度である1.5Kまで電荷秩序は形成されず電気抵抗が金属的になっていることがわかった。これは、高圧を用いることによって、電荷秩序を融解させ金属相を出現させることができたことを意味する。この圧力よりもわずかに低圧でおこる電荷秩序への転移は低圧側で観測された2次転移とはことなり1次転移であることが判明した。
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