研究概要 |
この研究の目的は,一軸性圧縮および静水圧によって有機導体を高度に圧縮し,常圧とはまったく違った新構造と電子状態を実現してそこに現れる新規電子状態を探索するとともに,有機導体の超伝導などの電子状態の制御と設計を試みることである。具体的には,ダイヤモンドアンビルを中心とし,5GPa程度までの,有機導体にとっての超高圧域を静水圧と1軸性圧縮で実現することを目指す。 本年は初年度であり,主として実験装置の導入と立ち上げを行った。まず,電気伝導測定のためのダイヤモンドアンビルの設計・試作を行った。高圧域でのダイヤモンドアンビルを安定に動作させるために,金属ガスケットに精密な穴あけ加工を可能にするマイクロミリングシステムを導入し,50μmの位置精度を実現した。また,ダイヤモンドアンビルの圧力の精密測定のために,ルビー蛍光顕微分光装置の改良を行った。従来の1/1000の時間(1秒)で0.06GPaの精度で圧力を決定することを可能にした。また,極低温において一軸性ひずみ及び超高静水圧のもとでX線構造解析を行うため,X線ゴニオメータの低温装置の中に圧力セルの回転機構を取り付け,対称性の高い結晶の回折実験の精度を高めた。 1軸性圧縮については,常温で発生した一軸性ひずみの極低温での変化を調べ,ベリリウム銅合金の圧力セルと,エポキシ樹脂の圧力媒体を使う限り,1.5kbar程度以上のピストン圧で圧縮すれば,低温でも一軸性ひずみが十分維持されることを明らかにした。
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