研究課題
特定領域研究
本研究の目的は、強磁場・強電場といった極限環境や人工構造を用いて、有機導体の低次元電子系が示す新たな電子物性を探索・解明することである。本研究では、磁場中電荷密度波と層状伝導体の層間磁気伝導という2つの電子物性の問題を扱った。磁場中電荷密度波については、電荷密度波転移温度が低くエネルギー利得が軌道量子化エネルギーやZeemanエネルギーと競合する場合に発現する複雑な逐次相転移や臨界点の問題を扱った。有機導体α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4に関する40T級パルス強磁場実験による相図決定と、磁場誘起スピン密度波転移の標準模型にZeeman効果を加えて拡張した平均場理論で現象を解明した。層状伝導体の磁場中層間伝導については、特に磁場方位依存性の問題を扱った。まず従来の半古典的Fermi面描像を超えて、磁場中層間伝導機構に関するトンネル描像を確立した。これは層間伝導を層間結合強度をパラメータとして摂動展開する方法で、dirty系(incoherent系)からclean系(coherent系)まで系統的かつ量子論的に扱うことが出来る。有機導体を模した各種のGaAs/AlGaAs系半導体多層構造を作製して層間結合を人工的に制御した実験を行うことにより、トンネル描像が予測する種々の角度依存磁気抵抗現象の層間コヒーレンス依存性を確認しその正当性を実証した。また半古典論が無効な量子系である磁気貫通系における磁気抵抗角度効果の振舞いをトンネル描像を用いて理論的に考察し、電荷密度波ギャップによる磁気貫通系である有機導体α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4に関する2軸回転実験でそれらを実証した。さらに多層Dirac電子系における負の層間磁気抵抗をトンネル描像により予測し、負性磁気抵抗が報告されていた有機導体α-(BEDT-TTF)_2 I_3におけるDirac電子系の存在を根拠づけた。
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