強磁場、極低温における分子性伝導体・分子素子の光物性測定

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15073207
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 田島 裕之 東京大学, 物性研究所, 助教授 (60207032)
• キーワード: 分子性伝導体 / 有機伝導体 / 磁気抵抗 / 光伝導 / 光反射スペクトル / 巨大負磁気抵抗

研究概要

強磁場・極低温における分光測定は、無機物では報告例があるが、分子性物質ではほとんどない。特に赤外〜遠赤外領域の分光測定に関して言えば、事実上皆無である。そこで、本研究では、分子性および有機薄膜デバイスを対象として、低温・強磁場と光を組み合わせた各種物性実験を行うことを目標とする。本年度は初年度であり、装置の作成に時間を割いた。以下その内容について記す。
i)強磁場下赤外〜遠赤外反射分光測定システムの作成
これまでの研究で、現在の遠赤外反射分光測定システムは、分子性伝導体の強磁場中スペクトル測定を行うためには、S/Nが不足していることがわかった。そこで、充分なS/Nが得られるように、光源、ビームスプリッタ、積算効率の改良を行い、約5倍程度S/Nを増加させることに成功した。これにより、分子性伝導体の強磁場中遠赤外反射スペクトルは測定可能となった。現在、装置の最終テストを行っている。テスト終了後に、τ型分子性伝導体の強磁場中遠赤外反射スペクトル測定を行う。
ii)有機薄膜素子の作成およびその物性測定
本研究計画においては、有機薄膜デバイスの極低温、強磁場中の物性測定が非常に重要になる。今年度においては、新規に購入したAFMの設置調整を行った。また、低温強磁場中の発光量子効率を求めるための、装置の作成、検出器の校正を行った。またこれらの装置の立ち上げと平行して、生体物質から作成した発光ダイオードのI-V特性の測定を行った。
その他、電荷分離巨大負磁気抵抗を示すフタロシアニン塩、に関する研究などを行った。

研究成果

• [文献書誌] Yuqin Ding, Hiroyuki Tajima: "Optical study on the charge ordering in the organic conductor β-(ET)_2PF_6"Phys.Rev.B. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] M.Matsuda, N.Hanasaki, H.Tajima, T.Naito, T.Inabe: "Anisotropic giant magnetoresistance originating from the π-d interaction in a molecule"J.Phys.Chem.. 65. 749-752 (2004)
• [文献書誌] N.Hanasaki, M.Matsuda, H.Tajima, T.Naito, T.Inabe: "Contribution of degenerate molecular orbitals to molecular orbital angular momentum in molecular magnet Fe(Pc)(CN)_2"J.Phys.Soc.Jpn.. 72. 3226-3230 (2003)
• [文献書誌] M.Matsuda, T.Asari, T.Naito, T.Inabe, N.Hanasaki, H.Tajima: "Structure and physical properties of two-leg ladder system,[PXX] [Fe^<III>(Pc)(CN)_2]"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 76. 1935-1940 (2003)
• [文献書誌] H.Tajima, S.Ikeda, M.Matsuda, N.Hanasaki, J.Oh, H.Akiyama: "A light-emitting diode fabricated from horse-heart cytochrome c"Solid State Commun.. 126. 579-581 (2003)
• [文献書誌] N.Hanasaki, H.Tajima, T.Imakubo, R.Kato: "Charge-density-wave state within Pd(dmit)_2 layer in two-dimensional molecular conductor (IEDT)[Pd(dmit)_2]"J.Phys.Soc.Jpn.. 72. 2291-2298 (2003)