本研究は、有機トランジスタをナノ寸法まで微細化して高性能化し、大面積センサーに応用する研究を推進する。昨年度までに、「有機半導体分子を用いたトランジスタをナノ寸法にまで微細化して、大面積センサーに応用する」ため、張り合わせ法によって有機トランジスタを製造する方法に取り組んだ。 昨年度までに取り組まれた研究では、電極は真空プロセスによって作製されているが、今後これらのプロセスの低コスト化には印刷プロセスが重要な役割を果たすことは言うまでもない。そこで、今年度は、有機トランジスタの電極層、絶縁膜層にはそれぞれ銀ナノ粒子、低温硬化型ポリイミド前駆体でパターニングを施すための要素技術の確立を目指した研究を推進した。 まず、焼成温度に対する銀ナノ粒子の抵抗率を測定した。銀ナノ粒子をインクジェットによりフィルム基板上に塗布し、異なる焼成温度で1時間大気中にて焼成し、電極とした場合の体積抵抗率の測定を行った。測定は4端子法を用いて行ったところ、焼成温度180度で作製した銀電極は体積抵抗率が約5.1マイクロオームセンチメートルという値を示した。これは銀単体の抵抗率(1.6マイクロオームセンチメートル)の約3倍である。このようにポリエチレンナフタレートのような比較的コストの安い高分子フィルムとプロセスコンパチビリティーのある180度という温度で焼成された銀ナノ粒子は、有機トランジスタの電極層として十分使用可能なレベルに到達したことが示された。
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