本研究は、有機トランジスタをナノ寸法まで微細化して高性能化し、大面積センサに応用する研究を推進することを目的している。これまでに、「有機半導体分子を用いたトランジスタをナノ寸法にまで微細化して、大面積センサに応用する」ため、ナノ印刷技術や張り合わせ法によって有機トランジスタを製造する方法に取り組んだ。特に、有機トランジスタの製造に当たっては、ソース・ドレインの微細化を低コストプロセスで実現するだけでなく、そのほかのゲート電極層、ゲート絶縁膜、有機半導体層などを低コストプロセスで成膜することが大切である。これまでに、筆者らはポリイミドの前駆体をポリエチレンナフタレートの上にスピンコートで塗布して、有機トランジスタのゲート絶縁膜とすることに成功している。昨年度は、ポリイミドの前駆体をインクジェットで塗布し、ゲート絶縁膜のパターニングに取り組んだ。インクジェット塗布時の周波数や印加電圧を最適化することによって、ポリイミド薄膜の平坦性や均一性を向上させた。また、電極層については、銀ナノ粒子をインクジェットで塗布して、ゲート電極に応用してきたが、昨年度は同様の手法をソース・ドレイン電極に応用した。特に、インクジェット描画によるミクロン寸法の電極を利用することによって、チャネル長が1ミクロンかつ高移動度のペンタセン電界効果トランジスタの試作に成功した。
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