研究概要 |
(1)インコメンシュレート有機超伝導体(MDT-ST)(I_3)_<0.417>が3次元的超伝導体であることを明らかにした。またシュブニコフ・ドハース振動を観測し、フェルミ面の再構成について明らかにした。 (2)電子数制御を行なった有機伝導体β'-ET_3(MCl_4^<2->)_<2-x>(M'Cl_4^<2->)_x[M=Co, Zn, M'=Ga, Fe]の輸送特性を調べ、特に熱起電力の変化が電子数の変化を顕著に反映する様子を明らかにした。 (3)2分子のTTFを含むテトラチアペンタレン(TTP)系ドナーにおいて、片側にエチルチオ基、反対側にメチレンジチオまたは1,3-ジチアン基をもった分子を新たに合成し、ユニフォームスタックをもち低温まで金属的な伝導体を開発した。 (4)ニッケルジチオラート錯体を用いてN型として空気中でも動作する有機トランジスタを開発した。 (5)πd系有機伝導体において、反強磁性と超伝導を示す(BDA-TTP)_2FeCl_4、反強磁性と金属的伝導性が共存する屈曲型ドナーの塩(EDO-TTFVO)_2FeCl_4について磁気的相互作用を計算した。 (6)有機伝導体θ-(BEDT-TTF)_2CsM(SCN)_4の巨大非線形伝導を利用した有機サイリスタ効果を観測した。このほか(TSM-TTP)(I_3)_<5/3>,(EDT-TSF)_2GaCl_4といった錯体において大きな非線形伝導を観測し、電流誘起金属相を得ることに成功した。 (7)新開発の分子磁性伝導体(EDT-TTFBr_2)_2FeBr_4が示す強いπ-d相互作用・大きな負磁気抵抗は、ドナー分子への化学的修飾の有効性を示している。また(EDTDM)_2FeBr_4の磁気輸送現象をπ-d相互作用を含む擬一次元電子系モデルを用いて解釈することに成功した。
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