研究課題
有機電荷移動錯体の巨大非線形伝導とそれによる電流振動現象を不均一に生じた電荷整列の競合によって解明した。最初にこのような現象が発見されたθ相の有機導体以外に、(TMET-TTP)(PF_6)_<0.27>、(R_2DCNQI)_2Cu、(MDT-TS)(I_2Br)_<0.42>といった有機導体で相次いで同様の巨大非線形伝導を見出し、なかでも最後の物質については、θ目以外で初めて自発電流振動(有機サイリスタ)を確認した。有機超伝導体κ_L-(DMkbo-TseF)_2[AU(CN)_4](THF)の構造相転移と低温強磁場の磁気抵抗から、インコヒーレントな伝導層に関連した特異な物性を明らかにした。またα-(BEDT-TTF)_2I_3において提案されているゼロギャップ状態について、強結合近似の立場から一般にゼロギャップ状態の出現条件について検討し、ノンストライプ電荷整列がゼロギャップ状態の出現に重要である可能性を指摘した。有機トランジスタのソース・トレイン電極に金属的な電荷移動錯体である(TTF)(TCNQ)を用いることによって、電極での接触抵抗が低減され、特にボトム・コンタクト型のFETについて効果が著しいことを、ベンタセン、DB-TTFなどについて明らかにした。他のAu, Ag, Cu電極などと比較することによって、金属電極の場合には有機/金属界面におけるポテンシャルシフトが著しいが、有機電極はポテンシャルシフトがほぼゼロの系として有用であることが分かった。(TIF)(TCNQ)電極はn型トランジスタの場合にも使用でき、特にDCNQIを活性層とする有機トランジスタでは空気に安定なn型デバイスが実現できる。
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