ヘテロ環オリゴマーの末端にトリフルオロメチルフェニル基を導入して高性能のn-型のFETを開発した。中心のπ電子コアにチアゾロチアゾール誘導体、およびビチアゾール誘導体を用いて、高い移動度を実現した。コアとしてターチオフェンおよびその類縁体を用いた化合物も高性能を示した。ターチオフェンは電子供与性であるために、電子受容性は低いが、高移動度(0.37cm^2/Vs)を示し、閾値45Vもチアゾール系よりも低下した。これは分子間の相互作用が大きく、電極と半導体のコンタクトも良いためと考えられる。電子受容性を高めるためにピラジン環を縮環した化合物の移動度は0.22cm^2/Vsであり、閾値は20Vとさらに低下した。これらのチオフェン環をセレノフェン環に置換した化合物についても合成した。セレン原子の導入で分子間の相互作用が強まり、若干の性能向上が見られた。さらに新規なn-型半導体としてインデノフルオレンジオン誘導体およびピラジン類縁体を合成した。インデノフルオレンジオン誘導体のトップコンタクトのFETデバイスは移動度0.16cm^2/Vsであったが、閾値は75Vと高い値を示した。ピラジン環を導入することで電子受容性が大きくなり、閾値は大幅に低下した。また、TTF系において多環芳香族環を縮合させることで、系の安定化と分子間π-π相互作用を強くすることが出来た。例えば、ナフタレン縮合化合物はホール移動度0.42cm^2/Vsを示したが、酸素に対して不安定であった。一方、キノキサリン誘導体は電子受容性のキノキサリン環と電子供与性のTTF骨格との分子間電荷移動相互作用でπ-スタック構造を取っており、そのFETのホール移動度は0.20cm^2/Vsであった。フッ素などの電子受容基を導入することでTTFとして初めてn型特性を実現した。
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