研究課題
(BO)_2Br(H_2O)_3の湿度依存導電挙動について、高分子に組み込んだ配向微結晶膜(RDP膜)を用い、再現性のある結果が得られる様になった。電気抵抗とX-線回折による伝導層間距離の同時測定を行い、湿度約7%以下で結晶構造が不連続的に変化し、電気抵抗が急増する事が判った。単結晶を用いた実験では結晶性劣化のため構造変化を追跡することが出来なかったのに対し、RDP膜は組み込まれた錯体微結晶の配向を固定し、構造変化を追跡するための試料形態として有用であることが判った。TTF型分子では困難であった分子長軸方向への分子間軌道間相互作用の発現を目指し、BOとビチアピラニリデンの部分構造を併せ持つ新規分子、TP-EDOTを合成した。本分子は、両母体化合物の中間的な強さを持つドナーである事が判った。陽イオンラジカル塩を中心に錯体作成を試み、PF_6,Sb_2F_<11>を対イオンとする単結晶性半導体を得た。昨年度に引き続き学外研究者と協力し、(EDO-TTF)_2PF_6の光誘起相転移について検討を行った。パルス幅0.12psの励起光に対する光誘起絶縁体-金属転移の応答速度が1.5psであることが判り、更に、この準安定状態に至る過程で反射率が振動的に変化する事が判った。熱的な定常状態において、この振動周期にほぼ対応する振動数を持つRaman散乱が観測されることから、本光誘起相転移においては電子・格子相互作用が重要な役割を果たしていると推定された。また、二次元的なC_<60>層を持つ(OMTTF)(I_3)(C_<60>)において、OMTTF陽イオンラジカル間に反強磁性的相互作用が見られた。超伝導体であるβ"-(ET)_2SF_5CH_2CF_2SO_3に一軸性歪みを加えたところ、歪みの印加方向によって超伝導転移温度が上昇したり抑制されること、ならびに、半導体相が超伝導相に隣接して出現することが見出された。
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