研究概要 |
(1)伝導性錯体におけるバンド巾制御を目指しテトラセレナフルバレンとTTFが融合したTTPドナー(1)、およびそのビニローグ(2)の合成に成功した。CV測定を行ったところ、1、2共に、四対の酸化還元波が観測された。1の第一酸化電位-0.09V(vs.Fc/Fc^+)は、DTEDT(-0.07V)、DSEDT(-0.06V)よりも低いことから、ラジカルカチオン状態においては、主にビニローグTTF側に陽電荷が分布していることを示唆している。1の第一酸化電位は対応するTTPよりも若干低く,第二酸化電位は逆に高くなっている。以上より,ラジカルカチオン状態においては,主にTTF側に陽電荷が分布し,第二酸化はTSF部位の寄与が大きいと考えられる。これらのドナーを用いた分子性錯体の導電性について検討したところ,TSFとビニローグTTFから成る類縁体がTCNQ錯体およびI_3塩の加圧成型試料と高伝導性(δ_<rt>=8-36Scm^<-1>)を示し,活性化エネルギー(0.02-0.05eV)が非常に小さいことから単結晶では金属的な伝導性が期待される。 (2)メチルチオ基がTTP導体の分子配列に及ぼす果について系統的に明らかにするために骨格中にセレン原子を含むTTPドナー,BTM-TS-TTP導体の開発を行ったところ,(BTM-TS-TTP)_4PF_6の単結晶を得ることに成功した。X線構造解析によるとBTM-TS-TTP分子は二次元的なβ型配列をとっており,この構造を基にバンド計算を行ったところ,二次元的な閉じたフェルミ面を有することが示唆された。この塩は室温において,800Scm^<-1>の高伝導性を示し,5Kまで金属的な温度依存性を示した。
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