研究概要 |
本年度は10Tという国内でも最高レベルに高性能化した強磁場下極低温X線カメラを用いて,強磁場下での電荷密度波(CDW)の変化を観測する事が出来た。この装置の特徴は,強磁場下極低温下という極端条件下にもかかわらず超高感度写真法であり2次元的な情報が素早く手に入ることである。その原理は,集光法による疑似回転カメラである。回転機構を省略できるため窓散乱などを効果的に押さえる事が出来,この10Tの磁場で7Kという温度まで撮影可能なカメラにより,ブラッグ反射の6桁落ちの微弱散乱を観測する事に成功した。 さらに,磁場下で量子ホール効果に類似した特徴を示す低次元物質η-Mo4011のX線散漫散乱写真を撮影した所,CDW1形成に伴う衛星反射だけではなく,特に微弱なCDW2形成に伴う衛星反射を観測する事に成功した。更に7T以上の強磁場で衛星反射位置の変化と解釈可能な現象を発見した。 この装置は低次元分子性導体のような,様々な波数,つまり予測不能な波数の変調構造が現れ,それが電子状態に大きな影響を及ぼす系の構造科学研究にとって不可欠となるであろう。 極低温で2倍周期と3倍周期の電荷秩序が競合するθ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4では,高電場下で巨大な非線形伝導やサイリスタ動作と関連する構造変化を見いだした。まずパルス電流に対応し,3倍の電荷変調は変化しないが,2倍の電荷変調が減少すること,さらにその電荷変調の消長に格子定数の変化が同期していることを見いだした。
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