研究課題
H17年度は本研究課題で建設されたキュービックアンビル装置が本格的に稼働し、1〜3のような成果を得た。一方、分担者の吉野治一がボストンカレッジのM.Naughton氏の研究室に滞在し、4の成果を得た。(1).1次元1/2充填Mott-Hubbard系としての有機伝導体(TTM-TTP)I_3の金属化(2).縮小π系(Me-DH-TTP)_2AsF_6の金属-絶縁体転移における量子臨界現象(3).擬二次元伝導体beta"-(EDO-TTFVO)_2FeCl_4の量子振動効果と磁場誘起相転移(4).(TMTSF)_2Cl0_4および(DMET)_2I_3の磁気抵抗の特異な磁場依存性である。下記に概要を述べる。キュービックアンビル超高圧装置では重い電子系や銅酸化物超伝導体など無機物の測定が主であった。この装置は最大圧力8GPa、最低温度2.5Kまでの電気抵抗測定が可能であるが、加圧によりガスケットが変形するために、その際試料に大きなストレスが生じ、脆い有機物は加圧時にしばしば破壊されてしまう。常圧下の測定精度と同程度のデータ(例えば抵抗率の4端子測定など)を得るための工夫が必要とされた。ガスケット変形に伴うストレスを減らす試料セッティング方法を開発した。その結果、金線の一部を薬包紙で固定する方法を開発し、実験成功率の飛躍的向上に成功した。また、これまで有機伝導体で困難とされてきた"試料の一定体積下での抵抗率の温度依存性"が2GPa以上の高圧下で詳細に調べることが出来るようになった。本質的な電気抵抗率の温度依存性の解析が可能になったことから、系の相互作用に関する詳細な議論が出来るようになった。このことは、有機伝導体における量子臨界点近傍で発現する非フェルミ液体の研究を切り開くとともに、反強磁性相や電荷秩序相に隣接する非BCS型の超伝導の機構解明に重要な役割を果たすものと期待される。超強磁場下での有機伝導体の研究に関しては、π-d相互作用に基づく新物性が期待できる擬二次元伝導体β"-(EDO-TTFVO)_2FeCl_4において、T<3K, H>8Tで磁場誘起相転移を発見し、H>17Tではシュブニコフ-ドハース振動の観測に成功した。また、擬一次元金属(TMTSF)_2ClO_4および(DMET)_2I_3において最良伝導面から10度程度傾けた面内で磁場を回転させたときに出現するLee-Naughton(LN)振動を確認した。LN振動の極小位置および他の角度での磁気抵抗の磁場依存性を40Tまでの磁気抵抗測定から明らかにした。
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