研究概要 |
H19年度は本研究課題で建設されたキュービックアンビル装置が本格的に稼働し,キュービックアンビルと組み合わせた電磁石も5Teslaの磁場の発生も順調である。これを用いて,「TTF-TCNQとTSeF-TCNQの温度圧力相図の作成と物性測定」を行った。TTF-TCNQの電荷密度波の研究は30年前のフランスのグループが3GPaまでの研究を行っており,過去の研究の再現の検証とより高い圧力での予想された金属化の様子を研究した。今回,キューピックアンビル装置で8GPaまでの研究をすすめ,電荷移動に伴うCDWが圧力とともに不整合=>整合=>不整合と変遷して低温までの金属化していく様子が明瞭に示された。 さらに,類型のTSeF-TCNQについての研究を進め,TTF-TCNQより低い圧力で,金属化に成功した。この一連の研究から電気抵抗の温度依存性をみると,温度の冪がいずれの物質も1以下で,これらの物質系の強相関性をうかがわせるものが出てきた。しかし,30年前の常圧での,電気抵抗の温度依存性が,面内抵抗が温度の2.3乗に従い,面間抵抗が1乗であり,その違いがCDWによる揺らぎ伝導と説明されていた。さらに常圧の測定の追試を行った結果,昔の結果が再現された。この常圧の結果と高圧の結果の関連の問題が未解決で残された。 また,「π-d系有機伝導体(EDT-DSDTFVSDS)2FeBr4のスピンプロップに伴う磁気抵抗の巨大異常とGaBr4塩の物性との比較によるπ-d相互作用の効果」についての論文をJ.Phys.Soc.Jpn.に投稿し,受理,掲載された。
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