研究概要 |
分子性導体における「電荷整列」現象に関連して研究を推進した。新たに得られた知見は次の通りである。(1)Θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(SCN)_4塩について、転移温度(190K)以上の「金属」相においてすでに電荷の「不均化」が発達しており、きわめて遅いゆらぎが出現していることを発見した。(2)同様な振舞いが、CsZn(SCN)_4塩においても観測された。(3)α-(BEDT-TTF)_2I_3塩においても、転移(135K)以上で電荷秩序が存在し、転移に向かって徐々に発達していくことを見出した。(4)α-(BEDT-TTF)_2I_3塩と同型の分子配列を持つα-(BETS)_2I_3塩で電荷分離を示唆する共鳴線を観測した。(5)α-(BETS)_2I_3、α-(BEDT-STF)_2I_3の金属絶縁体転移温度以上室温付近までの広い温度域で、ナイトシフト、緩和率の指数関数的な温度依存性を観測した。 また、BeCu製のクランプ型圧力セルを用いて約2GPa域までの高圧を印加して電子状態の変化を調べた。その結果、次の新しい事実を見出した。(1)β'-(Et_2Me_2P)[Pd(dmit)_2]_2の絶縁体-金属転移を含む広い温度-圧力範囲で^<13>C-NMR緩和率名T_1^<-1>の測定を行い、圧力による絶縁体-金属転移に伴うスピンダイナミクスを明らかにした。(2)(TMTSF)_2FSO_3の特異な温度-圧力相図について、圧力下で^<77>Se-NMRの吸収線、スピン-格子緩和率T_1^<-1>1、スピン-スピン格子緩和率_2^<-1>の測定を行い、各相が異なる電子状態にあることを示す多くの異常を発見した。(3)(BETS)_2(X_2TCNQ>の圧力下の絶縁相が反強磁性相であることを確かめた。 この他、いくつかの系について^<13>C,^<77>Se,^1H-NMR測定を行い、それぞれ興味深い知見を得た。
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