研究課題/領域番号 |
15073221
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高橋 利宏 学習院大学, 理学部, 教授 (60163276)
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研究分担者 |
開 康一 学習院大学, 理学部, 助手 (00306523)
千葉 亮 学習院大学, 理学部, 助手 (70406883)
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キーワード | 分子性導体 / 金属絶縁体転移 / 電荷整列 / 磁気共鳴 / 高圧物性 |
研究概要 |
前年度に引き続き、主にNMRを用いた分子性導体における低温電子状態の解明を行った。新たに得られた知見は次の通りである。(1)α-(BEDT-TTF)_2I_3塩における電荷整列、もしくは電荷不均化の圧力依存性を1.1GPaまでの圧力領域で^<13>C-NMRの角度依存性の測定によって解析した。金属的伝導を示す領域では、A、A'サイトが等価であるのに対し、B、Cサイトは著しく不均化をすることを観測した。電荷整列相では、A、A'サイトが不均化することと対照的である。(2)α-(BEDT-TTF)_2I_3塩と同型の分子配列を持つα-(BETS)_2I_3塩、α-(BEDT-STF)_2I_3塩で、^<77>Se-NMR吸収線形、緩和率の測定から、転移温度(〜50K)以上の広い温度領域で電荷不均化(電荷分離型)が発達していることを見出した。また、予備的ながらα-(BETS)_2I_3塩の単結晶^<77>Se-NMRの観測に成功し、α-(BEDT-TTF)_2I_3塩と同様な電荷の不均化が起こっていることを確認した。(3)(TMTTF)_2PF_6塩について^1H-NMR吸収線の解析を行い、低温反強磁性相の磁気構造の解析を行った。この結果、EPRの解析から推定された電荷整列パターンと一致する磁気構造をとることを確認した。この他、複数のBechgaard塩(TMTSF)_2X塩について^1H-NMR吸収線の解析を行い、低温反強磁性相の磁気構造の解析を行い、類似塩と系統的な比較を行っている。 (5)磁場誘起超伝導体λ-(BETS)_2FeCl_4の強磁場下の^<77>Se-NMRを行った。今回は、磁場依存性を測定し、Feイオンの作る交換磁場が33Tであることを再確認した。また、30K以下の温度で、電荷の不均化を強く示唆する線幅の増大を観測した。同様な^<77>Se-NMR線幅の増大をFeイオンを含まないλ-(BETS)_2GaCl_4塩においても確認した。(本研究は、Grenoble Joseph Fourier大C.Berthier博士らとの共同研究である)。(6)その他のAO3班矢持グループとの共同研究として「多重不安定性」を示す(EDO-TTF)_2PF_6の陰イオンダイナミクスの^<19>F-NMRによる解析、Et_2Me_2Sb[Pd(dmit)_2]_2の^<13>C-NMRによる解析等を行い、それぞれ興味深い知見を得た。
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