研究課題
2次元有機伝導体λ_(BETS)_2FeCl_4では、高磁場中でのみ超伝導が発現するという極めて不思議な温度-磁場相図をもつことを明らかしてきた。この磁場誘起超伝導カニズムはジャッカリーノ・ピーター効果で説明される。最近、この磁場誘起超伝導相において、超伝導秩序変数が空間的に振動する状態(Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov状態、FFLO状態)が安定化することが理論的に指摘されている。FFLO状態が安定化するためには、2つの条件1)超伝導がきれいな極限にあること。2)軌道効果が十分に抑制されており、パウリ効果で超伝導が壊されること。が必要である。この系では、面に垂直な磁場方位で量子振動が観測されることから、伝導電子は1000Aのオーダーでコヒーレントに運動することが可能であることが分かっている。これは超伝導コーヒーレンス長(100A程度)よりずっと長く、1)の条件を満足している。さらに軌道臨界磁場は相図の解析から50Tと見積もられており、この系において、軌道効果が十分に抑制されていることも明らかである。したがって、磁場誘起超伝導相内でFFLO状態が実現されている可能性は極めて高い。そこで、FFLO状態が実現しているかどうかを調べるため、超伝導相内での電気抵抗を詳細に測定した。磁場が正確にc軸方向(伝導面に平行)の時の、伝導面間の抵抗は超伝導転移に特徴的なディップ構造を発見した。この構造は電流に大きく依存し、電流が大きくなるとはっきりする傾向をもつ。特に22T付近では抵抗はこの電流範囲でゼロになる。また磁場がa軸方向ではディップ構造は見られない。ジョセフソンボルテックスはnodal planeのところに入り込むと、最も安定になることが予想される。したがって、もしλ_<FFLO>(nodal plane間隔)とI(ヴォルテックス格子間隔)の比が簡単な整数比になっているとすると、ジョセフソンボルテックス格子は、集団的にnodal planeのところで強くピン止めが起こり、比較的大きな面間の電流でもなかなか動けないこと、つまり抵抗が小さいことが予想される。また、λ_<FFLO>とIの比が簡単な整数とならないときには、ピン止めが弱く、ジョセフソンボルテックス格子は容易に動く、つまり抵抗が大きくなるだろう。超伝導転移に見られる抵抗のディップ構造は、このようにλ_<FFLO>とIの整合性で理解できる。
すべて 2006
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