1次元有機伝導体(TMTSF)_2ClO_4は低温でClO_4イオンが整列し、結果的に2組の一次元フェルミ面(FS)を持つ。伝導面(ab面)に垂直に磁場をかけると、磁場誘起逐次SDW転移を起こし、8Tで量子数n=1の量子ホール効果状態(SDW I)へ転移する。さらに強磁場をかけると26T程度で強磁場SDW II相へと転移する、この状態について、いくつかのモデルが提案されているが、未解決の問題となっている。ホール抵抗は、SDWI相では量子化されているが、SDW II相へ入ると量子ホール効果は崩れ、符号の反転を伴う大きな振動が現れる。これはSDW I相で観測できる短周期振動と同じ振動数を持つ。振動の振幅は磁場の増加、温度の低下とともに大きくなる傾向にある。 この振動は極めて異常なものであり、その起源が未解決の問題となっている。この特異な電子状態を調べるために、35Tまでの比熱測定を行った。その結果、SDWI相からSDWII相への転移磁場で、大きな比熱のピークが現れ、その後、振動する振る舞いが見られた。格子比熱は磁場に依存しないことから、この振動は電子比熱から来るものである。つまり、電子の状態密度が振動していることになる。比熱の極小が見られる磁場で、抵抗は極大を示す。つまり、抵抗の極大を取るときいは、キャリヤー数が減っており、その磁場では電子の状態密度は極小となることを明確に示すことができたことになる。
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