2次元有機伝導体λ-(BETS)_2FeCl_4では、高磁場中でのみ超伝導が発現するという極めて不思議な温度-磁場相図をもつことを明らかしてきた。この磁場誘起超伝導カニズムはジャッカリーノ・ピーター効果で説明される。この磁場誘起超伝導相において、超伝導秩序変数が空間的に振動する状態(Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov 状態、FFLO状態) が安定化することを検証するため、超伝導相内での電気抵抗を詳細に測定し、磁場が正確にc軸方向(伝導面に平行)の時の、伝導面間の抵抗は超伝導転移に特徴的なディップ構造を発見した。この構造はFFLO状態の超伝導秩序変数の周期とジョセフソンボルテックス格子の周期との整合効果であることを明らかにした。 κ-(BETS)_2FeBr_4は、約2.5KでFeスピンが反強磁性転移を起こすが、π電子との相互作用がさほど大きくないため、λ-(BETS)_2FeCl_4と異なり、低温で絶縁体になることはなく、約1.3Kで超伝導転移を示す。磁場を伝導面内に正確に平行になるようにかけると、低温で約10Tで磁場誘起超伝導相が出現することを明らかにした。この超伝導は再帰超伝導である。 1次元有機伝導体(TMTSF)_2ClO_4は低温でClO_4イオンが整列し、結果的に2組の一次元フェルミ面(FS)を持つ。伝導面(ab面)に垂直に磁場をかけると、磁場誘起逐次スピン密度波(SDW)転移を起こし、8Tで量子数n=1の量子ホール効果状態(SDW I)へ転移する。さらに強磁場をかけると26T程度で強磁場SDW II相へと転移する。ホール抵抗は、SDWI相では量子化されているが、SDW II相へ入ると量子ホール効果は崩れ、符号の反転を伴う大きな振動が現れることを明らかにした。さらに比熱がこの磁場領域で振動することを発見した。また、一組のフェルミ面ネスティングモデルで、ホール抵抗振動現象を説明することに成功した。
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