金属ガラスの微視的過程を明らかにすることを目的として、クラスター変分法と経路確率法を用いた計算を行った。クラスター変分法が特長とする規則j-不規則系の取り扱いを液体-ガラスーー固体転移にマップするのが一つの骨子である。多くの一次変態をする規則-不規則系に見られるスピノーダルオーダリングが熱力学的に理想ガラス転移に対応することを明らかにした。さらに、kineticsの側面をシミュレーションするために、クラスター変分法を時間領域に拡張した経路確率を用いて、高温不規則相(液相に対応)領域から種々の速度で冷却するシミュレーションを行った。スピンフリップ確率に熱活性性の温度依存性を導入し、スピノーダルオーダリング温度(理想ガラス転移温度)、で、フリッピングの確率が0(即ち活性化エネルギーが無限大)になるように設定すると、冷却に伴い、規則席が徐々にロックされていく様子をシムミュレートすることができた。又、冷却制度が速くなる程、ロックの始まる温度が高温側にシフトする実験結果も再現できた。従来のクラスター変分法では原子の位置は固定されており、格子点から変異することは許されていない。これに対して、連続変化クラスター変分法を用いると原子変異の影響を考慮することができる。特に、ガラス転移機構を明確にするためには、このような原子変位の導入が必須と思われる。2次元正方格子を対象に連続変位クラスター変分法の定式化を行った。原子間相互作用ポテンシャルにはレナードジョーンズポテンシャルを仮定した。これまでのシミュレーションでは、規則度の物理的意味が明快ではなかったが、連続変位クラスター変分法の範疇で、規則度に対して原子変位の意味を付与することが可能になった。
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