本年度は高い過冷却液体の安定性を有する種々の金属ガラスからのナノ準結晶等の初晶析出物の同定と解析を中心に研究を進めた。 その中で、Zr-Al-Ni-Cu金属ガラスにTiとNbを添加することにより、急冷過程でガラス相中に生成したサブミクロンサイズの非平衡bcc β-Zr相が加熱による相変態過程で消失し、ナノサイズの正二十面体準結晶相が析出するという新規な現象を見いだした。現在これらの詳細な相変態過程を調査中である。 また、Zr基合金のガラス相に存在する二十面体局所構造の解析も同時に遂行した。初晶状態でナノ準結晶が析出するZr_<70>Cu_<29>Pd_1ガラス合金の局所環境をX線吸収端微細構造解析(EXAFS)を用いて解析し、ナノ準結晶析出状態においてもZr周囲の局所環境がガラス状態のZr_<70>Cu_<29>Pd_1およびZr_<70>Cu_<30>の局所環境と大きな違いがないことを明らかにした。この結果は二十面体局所構造がZr原子まわりにする存在することを示唆する結果であると同時に、Zr_<70>Cu_<30>金属ガラス中に正二十面体準結晶相と類似の局所構造、すなわち二十面体局所構造が存在することを明確に証明した結果であると考えられる。次年度以降、これらの観点からの解析を他合金にも応用し、より詳細に検討してゆく予定である。 さらに、ナノ準結晶が急冷段階で非晶質相中に自己形成するZr_<80>Pt_<20>合金の変形破壊挙動についても高分解能透過電子顕微鏡を用いた微細組織観察をもとに解析した。この結果、ナノ準結晶粒子の間に存在する非晶質相に変形が集中し、ナノ準結晶粒子が変形を阻害しているというこれまでの推論を証明する観察結果を得た。
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