研究概要 |
バルク金属ガラスは、高強度機械材料、耐摩耗性コーティング材料、超軟磁性バルク材料などへの応用が期待されている。それぞれの用途に最適化されたバルク金属ガラス材料を設計する為には、安定化機構を解明し、機能を最適化する材料設計指針を構築することが必須である。これまでに行われてきた研究では、バルク金属ガラスの安定性に関して熱力学的に考察されているに過ぎず、材料設計指針を構築する為の情報の蓄積が不十分であると判断される。バルク金属ガラスの安定性を完全に理解する為に、微視的な安定化機構を解明する研究が強く望まれる。本研究では、バルク金属ガラスの安定化機構を電子論的観点から解明することを目的としている。 平成18年度に実施した研究により,バルク金属ガラスに共通する特徴として,(1)共有結合性で特徴づけられるクラスターが構造ユニットとして存在すること,(2)それらが内部エネルギーを増大させることなくランダムネットワークを組むことでエントロピーを増大させていることを明らかにした. Zr基バルク金属ガラスでは,金属結合で特徴づけられるKasper多面体型クラスターが共有結合の発達したクラスター間をつなぐ役割をはたしている.共有結合で特徴づけられるクラスター問の結合方向には,Kasper多面体型クラスターの面の数だけ自由度が生じている. Pd-Ni-Pバルク金属ガラスでは,安定性に寄与するクラスター軌道が,クラスター中心に位置するPのs, p軌道とクラスターの最外部に存在するPd/Niのs軌道により構成される.最外部の軌道がs軌道であるために,クラスター間の結合に方向性を生み出さない. 結合の自由度を生み出す機構は系により異なるが,いずれの合金系においても,内部エネルギーの低い共有結合生クラスターが,クラスター間の結合の自由度によりランダムネットワークを組むことでバルク金属ガラスが安定化していることが解明された.
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